日々の学びを書き留める

日々学んだことを記していきます.

北アルプス温泉縦走・仙人温泉

仙人温泉小屋

 

黒部の奥の本当に奥に仙人温泉小屋はある。

行った時はガスの中で歩いていて本当に不思議な気持ちになった。

 

この旅ではとにかくテント泊と決めていた。

しかし、ここではテント泊はできない。

なので、宿泊した。

 

暖かな小屋主さん、暖かな食事、暖かな温泉が嬉しかった。

 

温泉はとくにいい。

食堂の扉をあげて、10歩で湯船だ。

 

湯は近くの源泉から引いていて、

近くの川から水も引いている。

そんなざっくばらんな温泉だ。

 

湯に浸かると遠くに唐松岳頂上山荘の明かりが見える。

ぜひ一度行ってみるといい。

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仙人温泉小屋の温泉。ランプの明かりが落ち着く。

温泉の効能

美人の湯

温泉の効能はなぜか食堂に飾ってあった。

効能は美人の湯。

意味不明だ。

 

ちなみに、女性用の風呂もちゃんと用意されていた。

仙人温泉小屋 女湯

仙人温泉小屋 女湯

sennin.serveftp.net

 

祖母谷温泉を後に。

雨の後の日の夜は朝露がすごい。

だけどこの日は、本当にいい天気だった。

 

朝から黒部渓谷の谷底に朝日が眩しく落ちてくる。

 

テントについた雫を払いながら、朝食の準備をする。

今日はいい日になりそうだ。

 

朝ごはんは、アルファ米のご飯。

半分食べて、半分をお昼ご飯にする。

一人での行動だから、とくにゆっくりご飯を食べる必要もない。

 

食べたい時に食べて歩きたい時に歩いて、いい景色があれば立ち止まる。

そんな登山だ。

 

テントを片付けて、今日も出発だ。

 

6:30祖母谷温泉出発

 

祖母谷温泉小屋のおじさんに昨日のお礼をして、橋を渡る。

振り返ると、祖母谷温泉の小屋の全貌が見える。

 

こんな宿だったのか。

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祖母谷温泉小屋 朝日が似合う宿だ。

 

ここから少しアスファルト。いや、コンクリートだな。

まあまあ文明の力を感じる道だ。

 

そして、けっこうボロボロだったりする。

 

長いトンネルがあって道は急登である。

左は崖が空まで伸び、右を見れば川まで崖が切り立っている。

 

なかなかの陸の孤島だ。

 

しばらく歩くと温泉宿がちらほらある。

そして欅平駅に至る。

 

これまた、近代的な駅、トイレもウォシュレット付き。

山の中にこんなトイレがあるなんて。。。

 

さて、この欅平駅

これは黒部渓谷鉄道の終着駅だ。

 

しかし、地図を見るとさらに奥につながっている。

 

阿曽原温泉駅や仙人温泉駅。

そんな駅がちらほら見える。

 

しかし、こちらの駅は関西電力が黒部湖(昔はクロヨンってよんでいた)から伸びる電線網の整備のために使われる、作業用の鉄道なのだ。

 

ということを調べた。

ここは電波(softbank)が通っているのだ。

さすがは文明の力の結晶、駅である。

 

地図で線路があるから阿曽原温泉駅まで電車でいけるかな、と期待したが甘かった。。。

 

というわけで歩いて先を進む。

 

7:30欅平駅ー水平歩道へ

 

水平歩道から阿曽原温泉へ

水平歩道。

山の中なのにとても人工的な名前だ。

 

それもそのはず、ここも関西電力が黒部湖から伸びる電線網の整備のために使われる作業用の道なのだ。

そして、この道は人の手によって作られたようだ。

黒部川から伸びる絶壁をコの字にくり抜いて作った道で、なかなか圧倒される。

 

かつてドラえもんの映画で、「ドラえもんのび太のパラレル西遊記」という映画があった。

子供の時に好きで何回も見ていたのだが、その中で三蔵法師が出てくる。

そして、まさにそんな断崖絶壁にくりぬかれた道を歩いているのだ。

 

歩きながらそんなことを思った。

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水平歩道。黒部川の断崖絶壁にある一つの水平な線である。

この道、けっこう人とすれ違う。

 

登山を楽しむおばちゃんグループや足袋をはいた大工夫のにいちゃん達。

 

昨日のルートでは宿以外でだれとも合わなかったので、ちょっと嬉しかった。

 

道もなかなか面白い。

スリル満点な木道があったり、

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探検気分を味わえるまっくらなトンネルもある。

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水平歩道。 冒険心をくすぐってくれるトンネルだ。

そのうちの一つは、昨日の雨で水がたまっており、踏み入れたら膝まで浸ってしまったものもあった。

登山で靴の中を濡らすのは要注意である。

 

他にも、撮影ポイントが用意されており、大きな滝もある。

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折尾の大滝。撮影ポイントであり、給水ポイントである。

そんなこんなで観光しながら歩いていると、遠くに小屋が見えてくる。

 

阿曽原温泉小屋だ。

阿曽原温泉

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阿曽原温泉小屋 山の中に自販機がある!

13:00阿曽原温泉小屋

ここまできたがトラブル。

初日からずぶ濡れで、水平歩道でも見ずに濡れてしまい、足に豆ができたようだ。

 

なやんでいると、小屋の人がバンドエイドを数枚くれた。

包帯とかテーピングとか持っているくせに、そういうものは持っていない。

小屋のおばちゃんに感謝だ。

 

さて、今回の登山の目的は温泉である。

ここも入ってゆかねば。

 

しかし、この時運悪く掃除中で、お湯が空っぽであるとのこと。

というわけで、せっかく来たがお預けとなってしまった。

 

残念。

 

ここで一人のトレランシューズのおじさんが現れた。

どうやら僕と同じく、水平歩道を来たらしい。

 

阿曽原温泉でタバコを一本空い

「仙人温泉小屋にいくのかい?予約してるのかい?」

と聞いて来た。

「いえ。」というと

「それなら先に行って、宿主さんに行っておいてやる」

そう行って、そのおじさんは先を急いで行った。

 

なんとなく、負けてられない。

 

ぼくもそのおじさんを追いかけていくことにした。

 

仙人ダムから雲切新道へ

 

おっさんは早い。

この縦走の前の週は、トレランのレースに出ていた俺でも追いつけない。

って、まあ、こちらはテント背負っているんだけども。

 

シャンシャンとなる熊鈴を追いかけていくと

権現峠をこえて、とても山奥とは思えない大きなマンションのような建物がある広場に出た。

 

正直、登山道かどうか迷う。

 

古い轍もあって、なんだか不思議な雰囲気だ。

 

仙人ダムのトロッコ跡

権現峠の先の原っぱ ワダチがあった

ちなみにこちらは登山道ではない。

 

なんとなく、踏み跡を進むと、なんだか大きな鉄の門の中に続く。

 

仙人ダムの入り口の鉄格子

仙人ダムの入り口

 

この鉄の扉、なぜとても頑丈なのかというと、熊よけのようだ。

熊を入れないためだけにこんなに頑丈な扉があるのがとても不思議だ。

 

ちなみに中はまた不思議な空間だ。

仙人ダム 鉄格子の奥は廃墟跡

仙人ダム 鉄格子の奥は廃墟跡だった

 まるで廃墟。

 

この先は、何処かの会社に紛れ込んだような通路が続く。

 

中では社員が働いていたようなオフィスもあった。

こんなところで、こんな登山野郎に出くわしたら。。。

「コラッ」

と怒られるんじゃなかろうか。

 

そんな不安を感じながらつう度を歩く。

 

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しばらく歩くと線路にぶつかった。

仙人ダム。 登山道?とトロッコ電車の交差点

仙人ダム。 登山道?とトロッコ電車の交差点

右側の轍のある通路の奥からは、生暖かい風とゴォーという音がきこえる。

 

反対側は、橋を通り奥のトンネルにつながっている。

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欅平のところで調べた、一般人は乗車できないエリアのトロッコの線路がこれなのではないだろうか。

 

ということは、この線路はそのまま黒部ダムまでつながっている。

 

黒部ダムは戦前にできたらしい。

戦前にこんな山奥にこんな設備をつくることができたのか。。。

と、とても不思議な感じがした。

 

しかし、このダンジョンは楽しい。

まるでファイナルファンタジーⅦのミッドガルだ。

 

そんなことを考えながら歩いていると、外に出た。

 

やはり大自然の中だ。

振り返ると先ほどのトロッコの線路が通る橋が見える。

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その下からは、ものすごい水量が吹き出ている。

 

足元まで振動がくるような、ものすごい水の音であった。

 

さらにしばらく進むと、垂直に近い梯子が見える。

 

ここが雲切新道の始まりだ。

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白馬エリアにいた時は寒かったが、ここは標高も幾分低い。

 

そして季節は9月、まだ残暑が残るはずの時期である。

この水に飛び込んだら気持ちよさそうに感じた。

 

しかし、コースタイムはここから4時間30分が標準。

先を急がねばならない。

 

地図をみると等高線が密集している。

こういう梯子は標高を稼げるからとても助かる。

 

雲切新道を通って仙人温泉小屋へ

さて、この辺りは豪雪地帯だ。

冬は人が入れるわけはない。

けれど、一部のクレイジーな人が黒部横断といって冬山登りを一つのステータスとしているが、ここは通り道なのだろうか?

 

雪の力は偉大だ。

おそらくたくさんの雪崩が起きているのだろう。

 

だから木は面白い形をしている。

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雲切新道の急登。 ゴッチン坂

上から見ると、腰掛けるのにちょうどよさそうだ。

 

しかし今は登りである。

頭をぶつけるのにヒヤヒヤした。

 

だから、こういう名前なのか、ゴッチン坂。

 

なんとなく、親しみを覚える名前だ。

 

しかしここはすごい急登だ。

ところどころに裏剣という字がみえるが、ここは剣岳と関係があるのだろうか?

 

先ほどのおっさんはもう着いているのだろうか?

 

このまままた夜になってしまうのだろうか?

 

と、

急登がすごいといろんなことが頭を過ぎる。

 

なるべく無心になって、時計の標高を見ながら登る。

もちろん、数を数えながら。。。

 

しばらく歩くと、「小屋のぞき」という看板があるところに出た。

 

本当ならここから仙人温泉小屋が見えるのであろうか?

雲切新道。 小屋のぞき

雲切新道。 小屋のぞき

景色は真っ白。

どうやら雲の中に入ったようだ。

 

時刻は16:00ちかく。

 

さらに歩くと水場があって、

そして、川に差し掛かった。

雲切新道。 川。 もうすぐ小屋かな。。。

雲切新道。 川。 もうすぐ小屋かな。。。

ここの川の水を触ると、暖かい。

小屋の名前は温泉。

川の水は温泉なのだろうか。

 

そして小屋は近いのだろうか。。。。

もう結構体力がきつい。。。

 

と思っていたら到着した。

 

17:30仙人温泉小屋

 

仙人温泉小屋

仙人温泉小屋。 クマが出るのか。

仙人温泉小屋。 クマが出るのか。

小屋に着いた時はホッとした。

 

到着すると先ほどのおっさんと別の登山客の方がいた。

奥の方の小屋主の方に声をかけながら、

「早かったな、テント担いでるのに大したもんだ」

といってもらえた。

 

雲はついさっき出て来たらしい。

それまではとてもいい景色だったようだ。

 

そんな会話をしていると

奥の方のくらがりから、ぬーっとクマのような小屋主さんが出て来た。

 

小屋の前の看板のクマ注意はこのことか。

 

と思ったのは声には出さなかった。

 

ここはテント泊はできない。

それがとても嬉しかった。

 

テント泊は楽しいが、やはりちょっと辛い。

だいたい初日が雨の中だったし荷物もびしょびしょだ。

 

そんな僕を見て、奥の方の庭みたいにテーブルが置いてあるところで干したらいいということで、遠慮なく荷物を全部だして干させていただいた。

 

暗くなるにつれて、雲はだんだんと晴れていった。

明日の朝には乾くといいな。

 

そのあとに、もうご飯の時間だった。

 

そうこうしているうちに食事の時間となった。

 

 

 

ご飯は豪華。

仙人温泉小屋。 夕食。

仙人温泉小屋。 夕食。豪華だった。

味噌汁に山菜に佃煮に。ご飯は山盛りだ。

炊きたてのご飯がこんなにうまいなんて。

 

小屋主のかたは埼玉県の所沢の人で、埼玉に住んでいることを話すとビールをくれた。
普段は飲めないが、山では毎晩ビールを飲む。

下界と違って山で飲むビールはなぜかうまい。

 

先ほどのおっさんが前に座っていて、いろいろ話していた。

 

この方もかなりの山男のようだ。

奥さんに3万円渡されて、「これで遊んで来な」と言われ、ここに来たらしい。

 

ふゆも西穂高岳の方に入ったりするようだ。

 

北アルプスの温泉巡りをしていることを話すと、

「大冒険だね〜」 としみじみいってくれた。

 

嬉しかった。

 

それと、オススメの温泉を教えてもらった。

 

上高地の南の釜トンネルのところにあるという

卜伝の湯。

 

北アルプスの秘湯を巡っている野良そこは絶対行くべきだ」

 

と小屋主さんとおっさんともう一人いた方もうなずいておられた。

 

最後にそこは絶対行こう。

そう心に決めたのであった。

 

さて、食事の後は温泉である。

 

食堂の扉を出て10歩で温泉に入れた。

あたりはもうほとんどくらい。

なので、ランプの灯りをつけてくれた。

とても良い雰囲気だった。

 

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仙人温泉小屋 温泉 これは朝の写真

写真を撮ったが暗くて撮れなかったので、朝に写真をとった。

 

温泉には、温泉と川の水が黒くて太いゴムホースで惹かれている。

川はそのまま源泉掛け流しで、そのまま流れていく。

 

湯量はすごい。

 

湯に手を当てると熱いが水なら触れる。

なかなかの水圧だった。

温泉の圧力も見た感じ同じようなものだ。

 

遠くの山に灯りが見える。

どうやら唐松岳頂上山荘の灯りのようだ。

 

前に歩いたな〜と思い出しながら眺めていた。

まえにいった山を遠くから眺めるのは楽しい。

 

そして、

上を見ると星がとても綺麗た。

そんな風にして温まった。

 

温泉を上がって、この夜は暖かい布団で眠った。

 

なかなかいい夜であった。